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2007年 06月 28日
内外から叩かれるブッシュ政権『イラク 狼の谷』
マーク・ウォールバーグ主演の『ザ・シューター』で、
偉い議員さんが、「戦争の大義名分なんて国民は信じてない、でも票になるならオッケーさ」みたいなことを主人公にぶっちゃけていた。
へー、大義名分なんて口実だ、ってのはアメリカ人以外は気付いていても、
アメリカ人は信じてるのかと思ってたけど、そうでもないのか。
と、思うと同時に
皆、思ってても口に出さなかったことをついに(でもないか)言っちゃったね、って感じ。

ハリウッド的にも現政権批判は解禁になったようだが、
今、銀座シネパトスで公開されているトルコ映画『イラク 狼の谷』
ってやつのブッシュアメリカ批判は強烈。
強烈すぎで、批判が第一、脚本は二の次、っていう状態だ。

主人公はトルコの諜報部員。
トルコ軍(対イラクでアメリカと同盟)とアメリカ軍との間で、
実際にあった事件を発端として、
死に追いやられた友への復讐を果たすべく立ち上がる主人公。
イラク北部を舞台に、クルド人問題なんかも適当に織りまぜて繰り広げられるのだが、
なにしろ、主人公の作戦がずさん。
えーっと、あのー、そのホテルを爆発させてもビリー・ゼイン(アメリカ軍将校)は痛くも痒くもないような気がするんですが・・・みたいな感じの力技ばかり。
狙撃のためのライフルは銃身見えまくり(『ザ・シューター』を見習えよ)。

主人公の諜報部員としての能力を疑わざるをえないストーリー展開の中、
脈絡が希薄なまま、折り込まれるのは
「アブグレイブ刑務所での捕虜虐待事件」
「米軍による運搬中の捕虜虐殺事件」
「捕虜の臓器売買に米軍関与疑惑」
「結婚式虐殺事件」
「自爆テロ行為」「ジャーナリスト拘束事件」
等、実際に起きたり、疑われたり、続いている事件や行為。

とにかく、頭にキタことを全部入れちゃるっ! 
これが一番オレたちの言いたいことじゃけん! 
こういうのが今、オレたちが憂えていることなんじゃ!
という・・・映画制作の動機としては大変解りやすいのだが、
主人公とは直接関係のない坊さんが突然説教を始めたりして、
脚本はちょっと解りにくい、っつーか、だいぶ無茶。

対米軍批判だけでなく、
イスラム過激派の行為にたいする(ある種内省的な)批判も含めているため、
言いたいことがたくさんありすぎて、まとまってないのだ。
いっそ、ハリウッドスタイルに倣って、アメリカに似た架空の国の悪い奴らを
とことんとっちめる(死語)映画にしたほうが面白かったんじゃないかと思うが、
そういうことができないくらい彼らは怒っているのである。


映画としては超B級なのに、アメリカ人(だけじゃないけど)は本気で怒ったらしく、
「アメリカ人を野蛮人のように描いたトルコ映画」とか言って、
在外のアメリカ人にはその映画を上映してる映画館にも近づかないように、
とかお達しが出たそうだ。。。。
まー、今まで散々、世界中のいろんな国の人を野蛮人のように描いてきたお前たちが言うのもどうよ?って感じな訳だが。


それにしても、
この映画はイスラム圏で大ヒット(ある意味当然)してる訳で、
映画の完成度と観客のニーズは別のところにあるのだなあ、としみじみ思ったりする訳だ。
年間○百本映画見てます、とかいうマニアな方が何をどう論評しようが、
見たいものを見る、という動機にはかなわないのである。


なにはともあれ珍品なので、
国際情勢に興味のある方、イスラム圏に同情的な方、アンチブッシュな方にオススメします。
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by mekara_uribou | 2007-06-28 18:54 | ツッコミ上等映画レビュー